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登山ガイド試験の記録⑥ 二次試験(実技試験 安全管理技術)

登山ガイド試験の記録⑥ 二次試験(実技試験 安全管理技術)

私は2017年に登山ガイドステージⅠの試験を受け,2018年に登山ガイドに登録しました。
2年前の記録ではありますが,試験の大枠は変わっていないと思いますので,試験を目指す方のために役立てばと思い,試験の概要や勉強したことを何回かに分けて書いてみることにしました。

最終回は,私にとって一番の難関だった二次試験(実技試験 安全管理技術)について書きます。

前回までの記事はこちらから
登山ガイド試験の記録① スケジュール,時間,費用
登山ガイド試験の記録② なぜ登山ガイドの試験を受けたのか
登山ガイド試験の記録③ 上高地での資格試験対応講習会への参加
登山ガイド試験の記録④ 一次試験(筆記試験)
登山ガイド試験の記録⑤ 二次試験(実技試験 無雪期ルートガイディング)

さて,二次試験は,実技の検定試験(無雪期ルートガイディング自然解説技術と安全管理技術)の二種類です。

安全管理技術の試験内容は,簡単に言えば,ロープワークです。

ロープの結び方(フィギア・エイト・ノット,ムンターヒッチ,クローブ・ヒッチ,ボーラインなど),固定の仕方といった技術を駆使して,危険な場所をお客さんに安全に歩行してもらったり,滑落した人を引き上げたりするのです。ほかにも例えば,木と木の間にロープを固定してツェルト(簡易テント)張りをします。

木にロープを固定してツェルトを張ります

クライミングをやっている人にとっては,それほどハードルが高くないかもしれません。しかし私はクライミング経験がなく,ロープワークはほとんどやったことがありませんでした。上高地での資格試験対応講習会(5月に参加)の前に,クライミング用ロープ(8㎜×30m)を初めて購入したのですが,ずっしりと重くて驚きました。講習会参加者のなかで,ここまでロープ扱いがわかっていなかった人は私くらいじゃないかと思います。

講習会テキストに,結び方のイラストや解説はありますが,実際に見てみないと理解できませんでしたし,一度では覚えられないと悟り,なるべく動画に撮って覚えることにしました。さらに言えば,同じ結び方(結果)でも,そこに行きつく方法がいくつかあるのです。人によって微妙に違うので,複数の人に教わるとやや混乱します。自分が覚えやすいやり方を知ったら,それをひたすら繰り返すのがいいと思いました。YouTubeにもたくさん結び方の解説動画がありました。

救いだったのは,様々なロープワークがあるけれど,試験の内容は上高地講習会で特定してくれたこと。もちろん最終的には,場面に応じて様々なロープワークを駆使してこそ一人前のガイドなわけですが,まったく経験のないところから短期間でそこまで到達するのは現実的ではありませんでした。範囲を絞って集中的に練習する。ガイド試験突破にはそれでも精いっぱいでした。

試験に向けたスケジューリング

5月の上高地講習会で,試験にでる範囲で一通りのロープワークを学びましたが,その後,ロープやツェルトを使う機会はまったくないので,おそらく忘れてしまうだろう。それが予測できたので,試験対策として,試験の直前期である9月に,次のようなスケジュールを組みました。

9月9日(土)-10(日)東京都山岳連盟主催 ハイキングレスキュー講習会へ参加
東京都山岳連盟の個人会員なので,定期的に講習会の案内が送られてきます。ちょうどいい時期にこの講習会があったので参加しました。上高地の講習会で教わった内容よりも実践的で,場面に応じたレスキューの対処法を色々知ることができました。ただし,この段階で色々と応用を教わると頭が混乱してしまいそうだったので,ともかく久しぶりにロープを触り,感覚を取り戻す時間として割り切ることにしました。

9月18日(祝・月) 現役登山ガイドのK氏に依頼しての個別講習(丹沢)へ参加
上高地講習でご一緒したAさんの伝手で,現役登山ガイドK氏から試験対策としてのロープワークを教わりました。本番と同じ丹沢周辺の河原で,朝から午後3時頃まで,ひたすらロープワークを繰り返しました。なかなかできなかったクローブ・ヒッチ(結び方の一種)の結び方をようやく理解しました。K氏の助言は,「慣れているようにみせること」。試験官が見て,この人は慣れているから大丈夫だなと思ってもらうには一つ一つの動作を素早くスムーズに行うことが大切です。試験まであと1週間。せっかく覚えたことを忘れないように,そして,スムーズな動作に見えるように,毎日30分は,家で練習し,職場でも昼休みにこっそり練習しました。おかげで,試験の3日前頃にはだいぶ動作がスムーズになり,自信がついてきました。

いよいよ本番の試験

9月23日(土)-24日(日)安全管理技術検定試験(丹沢 ログキャビンしおや泊)

受験者は総勢30名程度。試験は受験資格別に,複数の班に分かれて行いました。私の班は 6名(女性2名,男性4名)で試験官は1名でした。事前に郵送されてきた集合案内に,「検定項目」という書面があり,これらを一通り検定していくというのが試験内容でした。大項目は次の5つ。書面ではさらに細かく結び方の名称や検定ポイントが記載されてました。

1 ロープの結び方と使い方
2 ロープの横方向の固定
3 懸垂下降と顧客を下降させる技術
4 ザック搬送
5 ツェルトの設営

初日の9時半に集合し,15時半ころ終了。試験官から,明日は検定はなく,いくつかの実技演習を野外でやることの説明がありました。宿に帰り,おいしいイノシシ肉の鍋をいただいてから,翌日の実技演習に向けたロープワークの解説。

2日目は8時に宿を出発。初日と同じ場所で,三分の一を使った引き上げ,腰にロープを回して座って安定させる方法,ショートロープを教わりました。ランチタイムを挟んで,早めの時間に実技終了。14時には宿に帰着し,講評後に解散となりました。

ロープワークは,現役ガイドの方々も忘れてしまうので,よく復習しているとのこと。「いざというときすぐ使えるようにしておくことは大切だが,ロープを使うような場面に至らないリスクマネジメントがさらに大事」とのお話に深く頷きました。

宿からバスで小田急線の新松田駅へ戻り,試験仲間数人で軽く打ち上げをしました。これですべての試験が終わったんだー!!という解放感でいっぱいでした。

合格後の手続き

資格取得に必要な筆記試験・実技検定・義務講習をすべてクリアした後,10月下旬に,「登山ガイド山岳ガイド・自然ガイド 職能別資格認定通知書 登山ガイドステージⅠ」が届きました。
その際に,認定通知後の諸手続きについて,案内書面が入っていました。

ガイドとして登録するには,既存の正会員団体のいずれかに加入し,正会員団体加入後,正会員団体を通じ,公益社団法人日本山岳ガイド協会(JMGA)への入会手続きを行うこととされています。つまり,合格通知だけでただちに,認定ガイドと名乗れるわけではないのですね。どの団体に加入するにしてもJMGAへの入会(ガイド登録)は翌年4月になるようです。

私の場合は,2017年の年末に所属団体を探し始め,2018年2月下旬に所属団体を決めました。結果的に静岡山岳自然ガイド協会(SMNGA)に決めた理由の一つは,上高地の資格試験対応講習の講師や,本番の試験の試験員はこちらの団体の所属ガイドの方が多く,親近感を持っていたことと,研修が活発に行われていることを知ったためです。上高地講習会の同期仲間たちは,それぞれ別の団体に所属しました。選択理由は人それぞれなので,自分の志向にあった団体を探すとよいと思います。

2018年5月 JMGA総会後に,2017年度の資格取得者に対して,資格認定書の授与式がありました。副会長の今井通子氏(登山家であり医師である登山界の大御所。女性初のアルプス三大北壁登攀に成功) から一人ずつ授与していただき,講習や試験でお世話になった先輩ガイドの方々や試験の同期仲間に再会し,感無量でした。そして,ようやく登山ガイドの一員になったのだという実感がわいてきました。

いかがでしたでしょうか。

これで,登山ガイド試験の記録はおしまいです。
長々とお読みいただき,ありがとうございました。

なお,山ガールの合格体験記にはもう少し詳しく書いていますので,興味がある方はぜひどうぞ。
kindleUnlimited対象です。

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